Intensivist 〜doctoryoの雑多なブログ〜

とある救急/集中治療医のブログ。

医師不足地域勤務を専門医更新条件に追加?

日本専門医機構がまたもや摩訶不思議な方法で医師不足を解消しようとしています。

 

2016年卒の医師から、つまり2018年から各プログラムに応募して、基幹病院を中心に計2-3病院を回って研修する制度が始まっています。2021年はその初代の多くが(一部は4年間のため)専門医を取得することとなり、今後は更新基準についての取り決めが必要。

 

今回この機構専門医の更新に、“内科医で5年間のうちの1年間”“外科医で15年間のうちの1年間”医師不足地域での勤務を課す制度が検討されているという記事になります。

 

元々は「専門医が乱立して分かりにくく、質担保ができていないため、統一しましょう」というのが大きな意義だったものの、医師不足まで解決しちゃおうという迷走具合。医師不足地域への対策は大切であり、県や市町村だけでなく、国策としても重要課題ではありますが、それを専門医の更新と紐付けるのは流石にどうかと。相変わらずダメな組織です。

 

もう一点、よく「医師不足地域の住人が都市部へ引っ越せば良い」という意見を聞きますがこれは違います。集落ごと引っ越すためには莫大な補助金が必要ですし、どのみち長期間を要します。僻地医療に携わっているプロフェッショナルに以前聞いたことがあります。都市部にしかいない人にはこれを理解するのは難しいんだろうなあ。

限界集落での僻地医療は、その村がゆっくり自然消滅していくのをサポートしながら見守ることだよ

mf.jiho.jp

ブログを放置して5年経ちました。。。

2016年にブログを開設して、数本の記事を書いただけで5年が経ってしまいました。。。

 

開設当初は学生だった自分自身もその間に変化があり、現在は救急医として働いています。まだ駆け出しですが、専門分野は"救急"、”集中治療"、"小児集中治療"です。

 

心機一転、今後は救急/集中治療医として雑多なブログを気ままに投稿していくことにしました。色んな感じたこと、考えてきたことなど書けたら良いなと思います。ではまた。

 

 

アンモニウム負荷試験&Fisherberg濃縮試験

アンモニウム負荷試験とFisherberg濃縮試験

→どちらも「遠位尿細管機能を反映する」検査です!!

遠位尿細管ではNa再吸収、KとHの分泌が行われています。

 

アンモニウム負荷試験/NH4CL負荷試験

NH4CLを経口投与(体内でNH4CL→HCL+NH3)

→acidosisに傾く→遠位尿細管からH分泌→尿中pH↓↓(負荷2hr後の尿pH≦5.5)

例えばRTAの1型か2型かの区別で言えば、

⑴pH≧5.5(尿を酸化できず)→H分泌障害@遠位尿細管=1型RTA

⑵pH≦5.5(尿の酸化OK)→H分泌能正常@遠位尿細管=2型RTA

 

★Fishberg濃縮試験(髄質機能検査)

概念;水制限→ADH分泌させる→正常なら遠位尿細管&集合管の尿濃縮作用が働く

方法:前日午後6時以降飲食禁止→翌日朝6、7、8時の尿浸透圧をみる

   →3回の尿のうち1回でも850mOsm/kg・H2O以上が正常

    3回とも850mOsm/kg・H2O未満なら尿濃縮能低下

※禁忌;飲水制限で脱水となり腎機能低下の恐れのある場合

※低栄養状態では尿中尿素濃度が低く、低値と出てしまうことも。

 

 

脱水の病態を掘り下げてみます^^

しばらくブログが途絶えていましたが、

現在は大学病院高度救急救命センターで実習中です。

そこで初期対応と入院管理を見学していると、

「水・電解質異常」が全然わからない・・・m(_ _)m

(←先生に質問されてもほとんどよくわからない)

とりあえず脱水から勉強しようかな。

 

1)低張性脱水(Na喪失型)

→細胞外液中の電解質濃度&血漿浸透圧低下により、

 細胞外から細胞内への水移動が起きる。

 〈原因〉

 ・嘔吐、下痢

 ・吸引による消化液の消失

 ・腎臓のNa保持機構の障害(食塩損失性腎炎、Addison病)

 ・血管外への体液の移行

※細胞外液減少によって見られる症状はNa喪失型の低張性脱水の方が強く現れやすい。

→皮膚turgor↓、HR↑、起立性低血圧、循環不全・ショック、Hct↑、尿量減少

※脳浮腫による悪心・嘔吐、頭痛も見られる。

※体温;循環不全→体温低下

 

2)高張性脱水(水欠乏型)

 →発汗の亢進、水分摂取の極端な低下などによる濃縮状態

→細胞内液から細胞外液への水移行

〈原因〉

 ・不感蒸泄の増加

 ・水分摂取の極端な低下

 ・口渇中枢の障害

 ・尿崩症(ADH↓により水が尿中にだだ漏れ)

※細胞脱水の症状は高張性脱水の方が現れやすい。

→意識障害、口渇感、粘膜乾燥、深部腱反射減弱

※体温;痙攣や発熱中枢異常(セットポイント異常)→上昇

 

3)等張性脱水(混合型)

→熱傷や出血などによる直接的損失による脱水

 

 まずはこの分類を再確認しました!

頭の隅には「気管支異物に注意!」を

小児の「突然の呼吸困難」では

気管支異物/誤飲の可能性を必ず考える!!!

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国試101G-18

1歳6ヶ月の男児。喘鳴を主訴に来院した。3時間前にピーナッツを食べていて、急に咳き込んだ。母親が背中を叩いたところ、小さなピーナッツの塊を吐き出して落ちついた。1時間前から喘鳴が聞こえるようになった。まず行うのはどれか。

a 咳嗽誘発

b 上腹部圧迫

c 胸部単純CT

d 気管支鏡検査

e 胸部エックス線撮影

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 答えは e ですが、cも迷うところ。

単純写真では見えない物質もありますが、

CTはやりすぎ&救急外来ではまず単純写真を撮るのが普通

よって e が最も適切ということですかね。

 

胸部X線撮影では吸気時と呼気時の両方を確認

異物がチェックバルブになって患側肺がパンパンになる

(完全閉塞なら無気肺になってしわしわに)

吸気時:健側肺には空気が入るため、縦隔が患側肺へ偏位

呼気時:健側肺からは空気が出て、患側肺はパンパンなので縦隔は健側肺へ偏位

→Holzknecht(ホルツクネヒト)徴候

(http://mymed.jp/di/au4.htmlより)

 

治療は全身麻酔下で、気管支鏡による異物除去

 

ナッツ類が異物だとアラキドン酸が多くて、

除去後も炎症がひどくなり化学性肺炎をおこすこともあります

 

次出るなら予防法か合併症ですかね。。。

アトピー性皮膚炎ガイドライン改訂2016

2009年以来、7年ぶりにアトピー性皮膚炎の診療ガイドラインが改訂されました!

これを機にアトピー診療について&変更点をまとめたいと思います。

【定義】

増悪寛解を繰り返す掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」

【診断基準】

 1. 掻痒

 2. 特徴的皮疹と分布

 3. 慢性・反復性経過(乳児では2ヶ月以上、その他では6ヶ月以上)

上記すべて満たすものを、症状の重さに関係なく診断する

その他は急性or慢性の湿疹とし、年齢や経過を参考にして診断

 

悪性疾患による皮疹の除外は重要にしても、

アトピーの診断はそんなに難しくないと勝手に思っています笑

周りを見て、「この人はアトピーなんだろうな」と思うことありますもんね。

たぶん『アトピーを治すこと』に皮膚科医の腕の見せ所があるはず!

 

【治療】

アトピー治療の3本柱は①薬物療法、②皮膚のケア、③悪化因子除去

表皮角層の水分含有量が減ってお肌がかさかさになると、本来果たしているバリア機能を失うとともに、極小の傷ができて「痒み」につながります。

だからまず②保湿外用薬を塗り続けることがとても大切(皮膚炎寛解後も続ける)。

あとは③食べ物やダニ、ハウスダスト、花粉、ペットの毛、化粧品、金属、汗(かいた後の汗)など悪化因子をその人ごとに見極めて除去していくことが必要ですね。

薬物療法

 (1)抗炎症外用薬;aステロイド、bタクロリムス、cプロアクティブ療法(初)

 (2)内服抗ヒスタミン薬;眠くならない第2世代抗ヒスタミン

 (3)シクロスポリン;成人の重症例に対して

 (4)ステロイド内服;急性増悪や重症の寛解導入時に

 (5)漢方療法;消風散、補中益気湯

プロアクティブ療法は寛解導入した後に保湿外用薬によるスキンケアに加え、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を定期的(2回/week)に塗布する療法。

※診療で参考にできる検査として、血清IgE値(長期的)、末梢血好酸球数・血清LDH値・TARC値(短期的)があるが、TARC/thymus and activation-regulated chemokine値が最も病勢を鋭敏に反映する指標(初)であるとされている。

※タクロリムスの発がんリスクに関しては国内外の研究から「発症リスクを高めるとはいえない」とした(初)。ただタクロリムスは顔に使いやすいものの、潰瘍面につかえないなど副作用も多く、専門医が使用するのが望ましいみたい。

 

とりあえず悪化要因を聞き出して除去してもらい、

ローションやクリームで保湿を徹底してもらい、

ステロイド軟膏やクリームを1日2回ぬってもらい、

補助として抗ヒスタミン薬を飲んでもらい、

そして寛解したあともプロアクティブを続けてもらう。

これがアトピーの治療法ですね!(いやぁーまとめた笑)

 

のどを診ればインフルエンザが診断できる?

冬の乾燥するちょうどこの時期
「流行のピークは過ぎた!」と言われているものの
小児科外来はインフルエンザが半数以上。
よって「インフルエンザ迅速診断キット」が大活躍します。
 
感度、特異度ともに90%を超えた検査ではありますが、
ある一定の確率で偽陰性が出てしまうことや
発症初期でウイルス量が少なく検出できないなど
問題点も指摘されています。
 
上気道炎の診察では咽頭扁桃や後壁などの観察のために
舌圧子とペンライトを用いて『咽頭/のど』を診ることが基本!
その『咽頭/のど』にインフルエンザに特有の所見が観察できるらしい。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/general/12/2/12_2_51/_pdf

表面平滑でぷりっとした濾胞(いくらみたいなもの)が見えます。
論文ではrice grainやtear dropなどと形容してありますが..(個人の見解笑)
「インフルエンザのリンパ濾胞 / influenza follicle」と呼ばれています。
 
・the novel influenza A/H1N1-sensitivity100%,specificity97%
  新型インフルエンザA/H1N1-感度100%、特異度97%
・the seasonal influenza A/H3N2,A/H1N1 and B-sensityvity95.46%,specificity98.42%
  季節性インフルエンザ-感度95.46%、特異度98.42%
・発症から観察できるようになるまで中央値5hr、平均7.8±5.3hr
 
昨日診た患者さんの 『のど』にはぷっくりとした濾胞がありました!